今回取り上げるのは、EarFun Air Pro 4+ という完全ワイヤレスイヤホンです。
私は以前から、完全ワイヤレスイヤホンという存在には興味がありました。AppleのAirPodsが広く使われるようになってから、街中でも完全ワイヤレスイヤホンを装着している人を本当によく見かけるようになりました。ただ、正直に言うと、音質面ではあまり期待していませんでした。

完全ワイヤレスイヤホンは、左右それぞれの小さな本体の中に、バッテリー、Bluetoothレシーバー、DAC、アンプ、ドライバーまで内蔵する必要があります。さらに、音声信号はBluetoothで伝送されます。有線のヘッドホンや、据え置き型のDAC・ヘッドホンアンプと比べれば、構造的にはかなり厳しい条件だと思っていました。そのため、販売当初からこの手の製品にはあまり積極的ではありませんでした。仮に買ったとしても、結局は音質にこだわった有線環境を使うことになり、無駄な買い物になるのではないかと思っていたからです。
しかし最近になって、レビューで「音質が良い」という評価をよく見かけるようになりました。YouTubeでも高評価の意見が多く、価格も1万円前後。さらにバッテリー持ちも良さそうだったので、試しに購入してみることにしました。正直、いろんな意味でレビューとして取り上げるかどうかは迷いましたが、実際に使ってみると、良い意味でかなり興味深い製品でした。そこで今回は、オーディオ好きの視点から、EarFun Air Pro 4+を使って感じたことを正直に書いていきます。
使いやすそうな外観
この手の完全ワイヤレスイヤホンは、見た目と使い勝手がとてもスマートです。ケースから取り出して耳に装着するだけで使えます。配線を気にする必要がなく、装着していることも忘れそうなくらい身軽です。有線イヤホンやヘッドホンに慣れていると、この手軽さはかなり大きな魅力に感じます。

付属品
付属品として、すこし安っぽい印象は受けますが複数サイズのイヤーピースが用意されています。耳の穴の大きさに合わせて調整できるので、自分に合うサイズを選びやすいと思います。完全ワイヤレスイヤホンは装着感が音質やノイズキャンセリングにも影響しやすいので、イヤーピースを選べるのは大事なポイントです。また、USBケーブルも付属しているため、基本的にはパッケージ内の内容物だけで使い始めることができます。

Bluetooth接続と対応コーデック
Bluetoothイヤホンの音質、特にノイズ成分は、イヤホン本体の性能だけでなく、どのコーデックで接続されているかにも左右されます。コーデックとは、Bluetoothで音声を送るための圧縮・伝送方式のことです。SBCやAACのような基本的なものから、LDAC、aptX HD、aptX Adaptive、aptX Lossless、LE Audioなど、現在はかなり多くの方式があります。
ただし、ここが少し分かりにくいところです。イヤホン側が高音質コーデックに対応していても、スマホやPC、Bluetooth送信機側が対応していなければ、そのコーデックでは接続されません。実際に使われるコーデックは、送信側と受信側の両方が対応しているものの中から選ばれます。EarFun Air Pro 4+は、LDACやaptX Adaptive、aptX Lossless、LE Audioなど、対応コーデックがかなり多い製品です。ただし、実際にどのコーデックでつながるかは、接続する機器によって変わります。
今回、私はこのイヤホンに合わせて、Creative BT-W5というBluetooth送信機も購入しました。BT-W5ではLEDの色で接続コーデックを判別でき、例えばaptX Adaptive High Qualityで接続できている場合は紫色に点灯します。

LEDでコーデックが色分け

このようにしてPCと接続した私の環境では音の見通しがよく、ワイヤレスでありながらガサつきにくい印象がありました。完全ワイヤレスイヤホンに対して持っていた印象が、かなり変わった部分です。一方で、Bluetooth接続は機器の組み合わせや電波環境、アプリ設定によっても印象が変わります。そのため、「このイヤホンなら必ずこの音になる」と断定するより、対応コーデックが多く、接続環境を整えるとかなり面白い音を出せるイヤホン、と考えるのがよさそうです。
音質
何も知らない状態でMusicBeeから再生したときの第一印象は、かなり驚きました。
まず、低音の迫力がしっかり伝わってくる。そして高音もきちんと出ている印象があり、全体としてはオーディオとしてかなりバランスがいい鳴り方。安価なイヤホンでありがちな、ただ低音と高音を強調しただけの、いわゆるドンシャリという印象はあまりありませんでした。正直に言うと、最初に聴いたときは「えっ、これでこの価格なの?」と思いました。完全ワイヤレスイヤホンに対して少し低く見ていた部分があったので、いい意味でやられました。
スマホアプリでイコライザーを調整
ただし、初期状態の音がそのまま自分にとって完璧だったわけではありません。
私の環境では、低音はやや強めに、高音は少しザラつくような印象がありました。そこで、スマホアプリのイコライザーを使って、何度も調整してみました。この製品は、いわゆるハイエンドオーディオのように、機器そのものの素の音をじっくり味わうというより、アプリで自分好みに整えて使うタイプの製品だと思います。そのため、今回はあまり難しく考えすぎず、聴き疲れしにくく、なおかつ低音の迫力とクリアさが両立するあたりを探しました。
しばらく調整していくと、かなり納得できる音になりました。低音の力強さは残しつつ、全体の見通しも悪くない。スマホとこのイヤホンだけで、日常的な音楽鑑賞なら十分楽しめるレベルだと思います。しばらく気に入ったイコライザー設定で聴き続けていると、耳の方も慣れてきて、かなり心地よく聴けるようになりました。

ノイズキャンセリングと外音取り込み
完全ワイヤレスイヤホンの便利さを一番実感したのが、ノイズキャンセリングと外音取り込みの使い分けです。
普段は、その場面に合わせて切り替えて使っています。歩いているときは、外音取り込みモードにして、周囲の音をある程度聞こえるようにしています。車や自転車、人の気配が分かる方が、外では安心だからです。一方、キャンプで雨音が気になるようなときには、ノイズキャンセリングをオンにします。このノイズキャンセリングが、思っていたよりもかなり優秀でした。雨音が気になる状況でオンにすると、その瞬間に余分な音がすっと消えて、一気に静かになります。完全ワイヤレスイヤホンのノイズキャンセリングに、正直ここまでの効きは期待していなかったので、これは素直に驚いた部分です。

ただ、ここは正直に書いておきます。ノイズキャンセリングや外音取り込みをオンにしたときに、音楽そのものの鳴り方がどう変わるのか、という点は、まだ自分の中できちんと評価できていません。周囲の音を消したり取り込んだりする使い勝手には十分満足しているのですが、音質への影響については、もう少し聴き込んでから改めて書きたいと思います。
有線ヘッドホンや据え置き環境と比べるとどうか
ここまで使ってみて特に印象的だったのは、完全ワイヤレスでありながら低音の押し出しがしっかりしていることです。EarFun Air Pro 4+は初期状態でも音の存在感があり、スマホアプリのイコライザーで低音を前に出しつつ、全体のバランスも保った設定にできます。
ハイエンドオーディオのように機器本来の素の音をじっくり聴くというより、自分が聴きやすい方向へ調整して使うタイプ。そういう性格の製品です。
一方で、有線ヘッドホンや据え置き型のDAC・ヘッドホンアンプと完全に同じ土俵に立てるかというと、そこまでではないと思います。HD650を、「iFi audio ZEN One Signature(DAC)」と「ZEN CAN Signature 6XX(ヘッドホンアンプ)」で鳴らした音と比べると、やはりHD650のほうが自然に感じます。差が出るのは、音の余韻、中音域(特に人の声の出方や響き)の質感、高音の透き通り方です。このあたりはHD650に分があります。
ただし、これはEarFun Air Pro 4+が劣っているという話ではありません。むしろ、この価格とサイズで、しかも完全ワイヤレスという条件を考えれば、ここまで鳴ること自体が驚きです。有線環境の代わりというより、日常の中で気軽に良い音を楽しむための機器として見れば、完成度はかなり高いと感じました。
総評
EarFun Air Pro 4+は、1万円前後の完全ワイヤレスイヤホンとしては、かなり満足度の高い製品です。アプリで音を自分好みに整えられて、ノイズキャンセリングも優秀、対応コーデックも豊富で、バッテリーもよく持つ。スマホとこのイヤホンだけで完結し、迫力のある音を気軽に持ち出せる。あらためて並べてみると、ずいぶん魅力の多い製品だと分かります。正直、少しずるいと感じるくらいです。
それでもオーディオ機器として真面目に評価するなら、私は今でも有線ヘッドホンやDAC、ヘッドホンアンプを使った環境の方が好きです。音の自然さや余韻、長時間聴いたときの疲れにくさは、やはり専用機器に分があります。
ただ、完全ワイヤレスの気軽さは、有線環境にはない魅力です。ケースから取り出すだけで、スマホだけで完結する。本格的な有線環境の代わりになるとは言いませんが、日常の中で気軽に音楽を楽しむイヤホンとしては、かなり優秀だと思います。完全ワイヤレスイヤホンも、ここまで来ているのか。懐疑的だった自分の印象を、確かに変えてくれた一台でした。

